西はあっちで東はこっち。「矢印幕」

かんりです、こんにちは。

 宿題がたまっているような感じです、1週間の後追いですが・・・。
文字に関する興味の開拓、そしてフォントに依存しすぎる現代デザイン・レタリングへの問いかけのためにも、1日1日がんばって行きたいと思います。

 さて今日の話題は、前日にも少しちらっと出ました、「矢印幕」について。矢印幕の呼び名は各所で異なりますが、ここでは単純に「矢印幕」と呼ぶことにします。

 いわゆる矢印幕の真髄は、起点と終点を表示し続けるという意味で、同じ運用であれば変更する必要がない、2つの行き先を1コマで完結できるという一石二鳥的な意味合いもありますが、やはり元々の由来としては「サボ」と呼ばれる行き先を表示した鉄板、これだろうと思います(私がサボを1つも持っていないため画像はありません・・・Googleなどで画像検索をオススメします)。末期にはプラスティックが使われ・・・いえ、この2009年にも未だ現役なところもあると思いますから、末期と呼ぶのは適切ではないかもしれないですね。
 サボといえば、鉄道部品収集家の世界では、蒸気機関車のナンバープレートや特急トレインマーク等と共に極めて高額で取引されるものがあり、1枚の鉄板が3千円程度から~果ては数十万円以上といった世界であり、すでに崇高かつ選ばれし者達の趣味の域に達しているといった具合のようです。
 それはともかく、鉄製で手作りかつ交換も手作業だったサボが、自動かつスイッチ動作で交換の手間いらずとなった「方向幕」に変わったことを見ても、機械面で見ればこれは自動化の流れの典型的な例だと思われるのですが、印刷面から見ても今まで手書き手作りだったものが写植版を用いた工業的大量生産となったこと、文字は図面の通り作られ、版として管理され、金太郎飴のように同じデザインを何度も使いまわるようになったわけで、極めて画期的だったと言えます。
 当初はサボのデザインを踏襲した矢印幕の表記でしたが、それもやがて矢印は限定的な運用、単純な支線区のピストン表記を除いて数を減らしていったという経緯があります。

 矢印幕のデザインも、さすが国鉄車両設計事務所です。全国津々浦々、これまた見事に統一されているばかりか、それぞれが独自のレタリングで文字を起こしています。現在のようにイラストレーターでマウスでピャッと伸縮したようなものじゃありません、ちゃんと1コマ1コマ、隅々までデザインが行き届いています。これは素晴らしい、秀逸の一言につきます。

 せっかくなので全国の矢印コマをいろいろとご紹介してみましょう。まずは北海道地域から、千歳空港←→札幌。新千歳空港も千歳空港も同じ空港です。旧来の表記のものになります。またここで2枚の写真に注目ください。どちらも同じ区間を指しているのに、表記があべこべになっていることに気が付かれましたか?。

北海道地区1

北海道地区1

北海道地区2

北海道地区2

 実は側面方向幕の巻取機は、車体左の側面と車体右側面それぞれに設置されています。同じデザインのものを取り付けた場合、どちらかの矢印の指す向きと列車が向かっていく先が逆になってしまいます。そのため、どちらも同じ行き先を同じ方向に示すように、左右が入れ替わったデザインのものを、それぞれ使用しているのです。これを私は個人的に「海山反転の原則」と呼んでいます。取り付けられる字幕は海側の幕、山側の幕と呼びます。そう呼ぶのは狭い日本、片方が海を向けば、片方が山を向くという表現が簡単なのでしょう。
 列車の編成というものは方向があり、そう簡単に西を向いていた先頭車が今日は東を向くというようなことはなく、大抵の場合「海」側の側面はずっと「海」側を向き続けるというもののようです(車の方向転換と違って、電車の方向転換の意味は大きいようです)。そのため海と山はあるがまま、同じ車窓はいつも同じ景色を映し、その側面の行き先はどちらか同じ字幕をずっと使い続けることになります。

  特急列車も、もともと昔は矢印でした。愛称と赤の矢印が特徴的です。サボ時代には、優等列車は文字が赤かったそうです。速達郵便に赤線を引くのと同じように、赤=早い、というイメージから来ているのでしょうか。登場当初の新幹線ひかり号も、最も速達だったものは文字まですべて赤色でした。

 

初期の485系矢印表記

初期の485系矢印表記

 特急列車の車両を使った普通列車になるとき、これが普通列車であることを示すために「普通」が併記されることがあります。地区によって普通の字が異なっていたりします。

 

常磐線

常磐線

山陰線1

山陰線1

山陰線2

山陰線2

 首都圏のE電区間には共通した字幕が使われていました。これらは首都圏幕と呼ばれ、地区によって一部改変はあるものの、どこであっても使えるようにという汎用性を持たせたつくりになっていたようです。支線も例に漏れず、長大編成の中央快速線の電車にも、南武支線のコマが入っていたりします。

 

E電の共通首都圏幕

E電の共通首都圏幕

 武蔵野線も快速運転と京葉線直通を果たすまでは線内折り返しの矢印がメインであったようです。

 

武蔵野線

武蔵野線

 飯田線にはいくつか区間運転があり、それぞれ矢印が見られます。武豊線や名松線の気動車にも矢印が見られます。距離が長い線区の区間運転、そして支線などの末梢区間、こういったところに矢印が見られるようです。

 

飯田線

飯田線

武豊線

武豊線

名松線

名松線

  関西地区には「ブルー」の快速表記が見られました。JR西日本となった現在では、ブルーは新快速の色ですね。下は快速と右側の行き先を消去してシールで補ったものでしょう。快速が消えたので矢印がヘンテコなところにあります。

 

奈良線快速

奈良線快速

桜井線

桜井線

 比較的最近の特急列車にも矢印が見られます。しかしこれらは運用区間の拡大と、巻取り機の最大コマ数の制約から、2個1化して作ったのではとも言われています。矢印のないものと比べると、赤い矢印からやじりを取ったものが「一文字線」になったような雰囲気にも見え、細かいところで体裁を共通にしている点が見られます。

 

特急雷鳥

特急雷鳥

一般的な特急表記

一般的な特急表記

 さて色々な矢印の側面幕をご覧頂きましたが、わたしが気になっているのは矢印の位置です。ものによって漢字の縦幅の中心に置くタイプと、表示域全体の縦幅の中心に置くタイプの2タイプがあります。異端としては前者+ローマ字にまで矢印があるものも見られますが、これはあくまで例外です。
 幕専では今後、矢印コマの実装が予定されていますが、「やじりは常に表示域の天地の中心を指す」ということでやって行きたいと思います。こうすると、首都圏幕にある南武支線の矢印は異端ということになりますが、全国を見てもやはり、やじりは中心を指している例が多いので、こちらを採用する予定です。

 矢印は汎用性に乏しいこと、海山反転の原則に縛られること、こういったデメリットがあり実用としてはやはり支線の折り返し運用など、常に表示し続ける例が最適だと思います。幕専としては専らお遊びデータとしての使い道になるでしょう。ただ、最近のご指摘では「臨時列車やイベント列車はシールで行き先を貼り付けるので、往路復路で使用できる矢印が主流である」ということもポイントとして上がっています。それぞれ理由があっての矢印ということでしょう。

 というわけで今日の話題は矢印でした。細かく見ていくと、矢印の先のやじりの処理にもいろいろあって面白いのですが、ここまで来ると深入りしすぎだと思うので今日はこの辺りにしておきます。それではまた。

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