誉田「小太りですか? 痩せ気味ですか?」

こんばんは、かんりです。
いよいよ関東中電2データでは総武房総各線が入ってきます。非常に悩みどころの多いコマが目白押しです。

 かなり早い時期から総武房総各線の113系電車は側面方向幕を装備していたと思われ、客車列車や485系などに見られる「行の字」が入ったデザインのものがあります。先日の話題にあった185系あっての115系と異なり、オリジナルとなる版が広域特急を除いて線区内では一番最初に作られたということになりそうですね。

 なぜ東海道本線の113系の電車幕と、総武線の113系の電車幕に違いがあるのかは常々不思議には思っていました。いろいろ調べていくとどうも東海道本線の113系は、先日の高崎東北線の115系の例ように185系がまず側面表示機を装備したものと思われます。線区密着の普通列車表示(種別なし駅名のみ)は185系の特徴です。185系竣工の時点で、東海道線の普通電車表示は「東京」「品川」「藤沢」「平塚」「国府津」「小田原」「熱海」「伊東」「伊豆急下田」「修善寺」「沼津」「静岡」「島田」「浜松」といったところが既に完成していたのでしょう。そのため113系についてはそれを流用するだけで事足りたのだと言えます。いずれも急行型電車の新規設計の一環であり、非常に力の入った作業だったと思われ、文字も秀逸です。

 一方の総武線方向幕は、113系がオリジナルであり、文字もそれ用に新規に起こされています。ただし一部には使いまわしではないかと見られる駅名もあります。しかし総じてその品質は「悪い」と言わざるを得ません。東海道線用の同じ行き先である「小田原」や「平塚」のコマを見ても、明らかに総武線側のデザインは劣っている印象しかありません。
 行の字が付く方向幕の時代の印刷機材というのは、当然昭和後期のものより品質に劣るのだと思います。これは実際に現物を見て思ったことですが、明らかにニジミが強いのです。当初「行の字」の入ったデザインで総武線の113系の方向幕が作られたようですから、この当時の品質のままの文字を、後に「行の字」の無いものを作っていくようになった過程でも模写なり再利用なりをしていったことによって、品質が向上することなく現在に至ったのではないかと思います。特にニジミというか謎の丸みが随所に見られるのが特徴で、コピーした用紙をまたコピーしたような、変な焼き増し感があります。

 そういうわけで、113系の総武線の方向幕にある文字は異端扱いしていくことが多いです。たとえば「大原」、ひどいの一言に尽きます。「熱海」は185系の「熱海」とは大きく違い、イビツです。「成田空港」これはまた後年付け足されたものでしょうが、しかしひどい。
 これらを最初に作って、その改良として185系などに応用されたのか、それとも全く関係なく進めたのかは分かりません。何故ただの近郊用普通電車のために線区オリジナルで1からデザインを起こし、他と相容れない内容で作り上げていったのか。秀逸な首都圏幕ではなく、総武異端幕が2009年になっても残っていったということが寂しいです。

 

総武線幕 大原

総武線幕 大原

総武線幕 熱海

総武線幕 熱海

総武線幕 成田空港

総武線幕 成田空港

 先日の京葉線のコマの経緯とか推論とかを書いたのですが、実は今回の話にも少し関係してきます。今日の話題の一番のヤマとして、この例を紹介したいと思います。

総武線幕 誉田

総武線幕 誉田

京葉線幕 誉田

京葉線幕 誉田

 さて画像をご覧いただきましょう。上が総武異端幕の誉田、下が京葉線の誉田です。何ともいえない字形の2コマですが、どちらの文字もこの地区にこの線区の電車限定でしか出てこない文字です。つまり両方とも異端文字なのです。京葉線の文字の選定には、図面ベースとは異なった例外があるのではということで圧縮説を書いたのですが、そういった方針の中、この痩せぎすの「誉」が生まれたのでしょうか。対する総武線の幕も昭和発祥でありながら異端文字にあふれるという状況で、どっちをとればいいのかと悩むこと限りなしです。
 大変困るというか悩ましいのが、他の特急電車の文字デザインなどと比べて「品格がない」と感じることです。これは恐らくですが文字を書いた人間が違うのだという理由があってのことだと思うのですが。どちらの文字も引き伸ばしをして位置と縮尺だけ決めたのような雰囲気です。文字のレタリングの傾向として、他の幕のコマに同じような文字の処理が見て取れれば異端と扱うこともないのですが、この場合両方共に異端を多く含む幕の中にあって1文字1例、他の共通図面の文字とも点の処理などに共通点を見出せないなど、気軽に選ぶにはためらいを覚えるわけです。

  国鉄方向幕書体の開発でも、この2文字どちらを元にするかという悩みがあって、最終的には総武異端幕の方を採用したのですが、今回の幕専でもやはり同じ悩みに陥るだろうと思います。特にデザイン違いが入らない企画データですから、1デザインのみです。もしかすると、どちらも使わずにまた合成ということもやってしまうかもしれません・・・。

 ちなみに、現在の総武線の113系(厳密には内房線外房線の方にいるようですが)の幕でも、なぜか近年登場した電動の前面幕では、異端文字を徹底的に排除して、新たに版を起こしているようなのです。その内容を一部紹介しましょう。「四街道」「佐貫町」「成田空港」「大原」こういった、文字デザインのネジが数本ぶっ飛んでいたコマについて、綺麗に共通図面ライクな文字に差し替えられています。成田空港の緑コマの元になったのは、恐らく「千歳空港」です。千歳空港のローマ字がCHITOSEKUKOだったせいで、成田空港もNARITAKUKOとしてしまったのでしょう、実は側面はNARITA AIRPORTなんですね。わたしはこの色の付いた前面幕の版の方向性については強い支持の念を抱く訳ですが、しかし逆に謎もでます。なぜなのか、なぜそこまでして異端文字を排除したのか。実際、側面は改善されることなくそのままであり、側面と合わせて一気に改善するという意味ではなさそうです。新規に起こす理由が何だったのかが分かりません。
 方向幕デザインに何か特別な思い入れのある人が、わざわざ既存側面幕のデザインを精査し取捨選択したのではないかと疑わざるを得ません。何かしらの深い意図があったと、働きかけがあったのではないかと、わたしはそう思います。ただ、逆の発想もできるかもしれません、本来図面にこれらの文字がなかったことで、印刷業者が適当に作った。10年以上の歳月を経て、新たな前面用の版を作ろうとしたがどうしても図面が見つからない(元々ないのだから当然である)、そこで新規に作った、という説もありかもしれません。まぁ今となってはこれも、神のみぞ知る世界に近いです。
 ちなみに先の例で上げた「誉」の字、この電動幕では京葉線タイプが用いられています。

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

(上)前面電動幕 (下)側面幕

緑の成田空港と、この空港の字に注目

緑の成田空港と、この空港の字に注目

 実際の方向幕にはあるけれども、幕専としては一切入れていないデザイン、改良を施して原型を留めないデザインというのは存在します。一番頻出の例が「温泉」の2文字、これは2例ある温泉の字にわたしが納得できないので改善を施しています。また「美」の字もかなり異端率が高いですので改善をしています。「空港」の2文字も成田空港が異端文字だったこともあり使いまわしで九州まで飛び火してしまってますが、幕専では基本的に除外です。国鉄の方向幕の共通図面にある文字は、それ1文字を見ただけで品格と美しさ、そして統一された一体感を感じるレベルのものが殆どであり、その品質を著しく損なっている物は除外するか改善補正するしかないと思っています。異端文字の殆どが、後で付け足されたか初版とは書いた人間が違う、そういった大人の事情でこうなっているのだろうと思われますので、そういったホコロビをいかに見つけて、うまく手当てしていくかが「幕専」の開発で肝になるだろうと思います。

幕専では、この温泉の字はボツ扱いとなっている

幕専では、この温泉の字はボツ扱いとなっている

「美」なのに美しくない

「美」なのに美しくない

宮崎は寝台特急の版から、空港は側面の成田空港から、もう無茶苦茶である

宮崎は寝台特急の版から、空港は側面の成田空港から、もう無茶苦茶である

 単にカトペのコピペで済まない、そんな幕専ですが、わたしがなぜこのコマにこの文字を選んだのか、そういったところまでフリークな方には楽しんでいただけるように作っているつもりです。今回分のデータは大変多く、一挙リリースのためにお待たせしていますが、是非そういう意味で「文字」にフォーカスを当てて楽しめるものになればいいなと思います。